楽曲編成 |
花前に蝶舞ふ紛々たる雪、柳上に鶯飛ぶ片々たる金、花は流水に随って、香の来ること疾し、鐘は寒雲を隔てて、声の至ること遅し。 清水寺の鐘の声、祇園精舎を現し、諸行無常の声やらん、地主権現の花の色、沙羅双樹の理なり、生者必滅の世のならひ、げに例あるよそほひ。仏も元は捨てし世の、半ばは雲に上見えぬ、鷲のお山の名を残す。寺は桂の橋柱、立ち出でて峰の雲、花やあらぬ初桜、祇園林、下河原。 南を遥かに眺むれば、大悲擁護の薄霞、熊野権現の移ります、み名も同じ今熊野、稲荷の山の薄もみじの、青かりし葉の秋、また花の春は清水の、ただ頼め頼もしき、春も千々の花盛り。 山の名の、音は嵐の花の雪、深き情を人や知る。 わらはお酌に参り候ふべし。いかに熊野、ひとさし舞ひ候へ。 深き情を人や知る。 のうのう俄かに村雨のして、花を散らし候ふはいかに、げに只今の村雨に花の散り候ふよ、あら心なの村雨やな。 春雨の、降るは涙か、降るは涙か桜花、散るを惜しまぬ人やある。 由ありげなる言の葉の種、取り上げ見ればいかにせん。都の春も惜しけれど、なれし東の花や散るらん。 げに道理なりあはれなり、はやはや暇取らするぞ、東に下り候へ。 なにおん暇と候ふや、なかなかのこと、疾く疾く下り給ふべし、あら尊や嬉しやな、これ観音のご利生なり。 これまでなりや嬉しやな、 これまでなりや嬉しやな、かくて都にお供せば、 またもや御意の変はるべき、ただこのままにお暇と、木綿づけの鳥が鳴く、東路さして行く道の、東路さして行く道の、やがて休らふ逢坂の、関の戸ざしも心して、明け行く跡の山見えて、花を見捨つる雁がねの、それは越路、われはまた、東に帰る名残りかな、東に帰る名残りかな。
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