楽曲編成 |
山寺の 春の夕暮 来て見れば 入相の鐘に 花ぞ散りける。散ればこそ いとど桜は めでたけれ、よしや散らでもあだし世と、花によそへし口ずさみ、それを手本に鶯が、歌をうたへば琴ひく鳥も、声にあはせてつづみ草、手をつくづくし、つぼすみれ、つつじ、山吹、いろいろの、花もいつしか夏山の、青葉をわけて、初音めづらし時鳥、雲井のよそに恋慕ふ、身は卯の花のしらむまで、寝ずに待つのをなぶりに来るか、槇の板戸をほとほとと、叩く水鶏のだましくさつたか、ええしんぞ面憎や、にくい、可愛の睦言を、誰に洩して名はたち花の、薫ほのめく薄衣、袂すずしき秋風に、招く芒は若紫の、萩にそふとてこぼるる露の、露のよすがを忍びね、松虫、鈴虫、きりぎりす、きりはたりてふ桐の間を、分け越え来つる初雁の、つばさにかけて送る文、見よかし見よかしもみぢ葉も、色の最中の時雨にぬれて、竜田の川に流れの身、恋ぢやせくまい浮世の車、めぐる月日も、ふるや、ふる降る、雪も、霜も、霰も、消えてたまられぬ、諸行無常のことわりを、告げてや、鐘もひびくらむ。
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